【生産者 SPECIAL STORY】宝来屋本店:先人から受け継いだ伝統の「あまざけ」を時代のニーズに合わせて昇華させる
どんな逆境にも屈せず伝統を守り抜いた100年企業の自信
福島県の商業の中心にある郡山市。人と物が行き交う街に創業100年を超える株式会社宝来屋本店がある。糀づくりから始まり味噌、あまざけ、漬物の素などを造り続けている。
専務取締役の柳沼真行(やぎぬま まさゆき/写真左※)さんは「創業当時はスペイン風邪が流行したり、その後も第二次世界大戦など世界経済が大変な時代を乗り越えてきました。もっとローカル的な出来事ではここ100年間に3度も水害に遭い水没していますが、地元の皆さんに助けられながらなんとか続けることが出来ています」と振り返る。
※写真右は兄で代表取締役の広呂人(ひろひと)さん
困難な状況を幾度となく乗り越え、100年という長きに渡り伝統と製法を守り続けてきた宝来屋本店。その理由について「移りゆく時代の中で求められる価値も変化し、当社が取り扱う商品も変わってきました。近年ではあまざけがいい例です」と柳沼さん。
甘酒は寒くなる季節に巾着袋のような容器に入ったものが店頭に並ぶが、宝来屋本店では日本で初となるペットボトル入の商品を開発。しかも常温流通が可能ということもあり、業界がざわついた。まさに健康志向から脚光を浴びた甘酒の価値を上げる一手だと言ってもいい。
「他社のあまざけは塩や砂糖を加えたものがありますが、当社は一切、混ぜ物なし。そのこだわりが認められ、セブン&アイ・ホールディングスのセブンプレミアムブランドのOEM生産をさせていただいています」と柳沼さんからは商品への自信がうかがえる。
原料も製法も同じでも、中身はまったく別物に仕上がる
宝来屋本店のあまざけの美味しさについて柳沼さんに聞いてみると「糀は米から作るものですが、食べる米と弊社のあまざけ糀に使う米では精米の歩合がちがいます。当社では日本酒に使う米のようにかなり磨きをかけています。そうすることで甘さに雑味がなくなり、より白いあまざけができるのです」と教えてくれた。
しかし、あまざけ造りの原料はそうかわりはないはずだが…
「同じ原料、同じ製法で造っても、それぞれ使っている糀菌がちがうので同じ味にはなりません」と柳沼さん。
さらに糀を造る際、米の水分量や気温、蒸し時間など米と糀菌が結びつくベストな条件を見つけるために、先人たちが残してくれたデータと照らし合わせながら仕込むという。「味噌やあまざけ造りは数値的なものが大事なので『化け学』に近いんです。だから仕込む前は電卓を必死に叩きます。でも昔から蔵に住み着いた菌の効果もあると思っています」と柳沼さん。
数値だけでは表せない、現代でも解明できない神秘的な力のおかげがあるのも確かなようだ。
「あまざけ」という伝統文化を後世に残し、世界へ羽ばたく
これからのあまざけ造りはどうなっていくのか。
柳沼さんは「まずはあまざけの底上げではないでしょうか。半端な技術で粗悪品が流通し、消費者に“あまざけってこんなものか”と思われることが恐ろしい。そのために生産者が意見交換や技術を研鑽しあわなければいけないと思っています。先人たちが残してくれた文化を我々が継承し、さらに伝えていく責任があります」と答えてくれた。
もう一つはあまざけという食文化を世界に広めることだという。「和食がユネスコの世界無形文化財に登録されています。あまざけだって食の文化。国や宗教、人種の垣根を超えて広げていきたいですね」と世界進出を掲げる。
先人から受け継がれた「あまざけ」は現代で改めて注目を浴びている。宝来屋本店の取り組みは、間違いなく後世に受け継がれていくだろう。
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生産者インフォメーション
株式会社 宝来屋本店
WEB | https://www.e-horaiya.com/ |
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住所 | 福島県郡山市田村町金屋字川久保54-2 |
TEL | 024-943-2380(代表) |
オンラインストア | https://www.e-horaiya.co.jp/ |