【生産者 SPECIAL STORY】森藤食品工業:出しゃばらない奥ゆかしさがある漬物は 食事の主役を引き立たせる名脇役
作り続けて60年。地元の素材を余すことなく美味しく漬け込む
日本人の食卓に必ずといっていいほど添えられる漬物。歴史を遡れば縄文時代に野菜類を海水に浸した塩漬けがあったといわれ、平安時代には現代の形に近いものが食されていたと「延喜式」にも記されている。当時からきゅうりやなす、大根、みょうがなどを塩や味噌に漬け込んで親しまれていたようだ。
素材も味も豊富で、飽きることなくついつい箸を伸ばしてしまう、魅力的な漬物を地元の食材を使いながら60年も作り続けている森藤(もりとう)食品工業。創業から4代目となる森藤洋紀さんは「昔、この辺りは野菜やくだものの栽培が盛んで、うちはそれを運搬する仕事をしていました。しかし運搬しきれなかった野菜を無駄にしないようにと漬物を漬け始めたことがきっかけだったようです」と創業の成り立ちを話す。
そして商品名である「福島りょうぜん漬」の由来についても「今から700年余前、南北朝時代にこの近隣の霊山(りょうぜん)を治めていた北畠顕家公が鷹狩りをした際に立ち寄った農家で食べた漬物が美味しかったことにあやかり、名前をつけたと聞いています」と教えてくれた。
いつの時代もお客様に愛され育てられた、こだわりの逸品
主力商品のネーミングも「かあちゃん漬け」や「とうちゃん漬け」などユニークだ。それもそのはず、漬物作りは近所の“かあちゃん”たちが行っていたからだ。さらにとうちゃん漬けはお客様に「あれ?かあちゃんはいるのにとうちゃんはねえのが?」とリクエスト(?)があり商品化された。「この2種類はうちの礎を築いた漬物」と森藤さん。ほかの商品も自分たちで開発したものよりお客様の要望を商品化したものが多いという。その数は単品商品でも30種類。詰め合わせを含めると40種類にもおよぶ。
原料の野菜は、漬け込む時期にもっとも良い品質のものを使用するし、きゅうりはこの近隣のものしか使っていない。「福島のきゅうりといえば須賀川。でもこの辺りの品質も素晴らしい。特にかあちゃん漬け、とうちゃん漬けは地元のお客様に育てられた商品なので、地元産を使います」と胸を張る。
さらにりょうぜん漬は全国でも珍しく、原料の仕入れから洗浄、切り分け、発酵、漬け込みまで一貫して行っている。「自社で全行程を行っているところはほとんどないんじゃないですかね? 味を左右する塩の振り方も目安はありますが、職人の“手”によるところが大きいですし、一つ一つ丁寧に仕込むことが美味しさにつながっているのだと思います」
美味しいものは手間隙かかる。まさにそれを体現している。
食卓を輝かせる存在であり続けるために、漬物文化を絶やさない
こだわりの漬物について森藤さんはこう話す。
「ステーキや鰻、天ぷらは毎日食べていると飽きるでしょ? でも漬物は飽きませんよね? 漬物は主役でなく脇役。でも主役を引き立たせるチカラ、出しゃばらない奥ゆかしさがある。まさに食の名脇役ですよ」と力を込める。
これまで数々の文化が消えてなくなってきたが、漬物は平安時代の頃から残る大切な食文化の一つ。いつの時代も必要とされてきたからこそ残っていると言っても過言ではない。
「漬物は小さい存在なのかもしれませんが、大きな意味を持って食事に添えられるもの。自分の役目は漬物の魅力を伝え続け、未来に残すことだと思っています」
森藤さんの“漬物愛”が、福島の、いや日本の食文化を支えているのかもしれない。
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生産者インフォメーション
森藤食品工業 福島りょうぜん漬本舗
WEB | https://www.ryozenzuke.jp/ |
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住所 | 福島県福島市大波字星の宮32 |
TEL | 024-586-2345 |
営業時間 | 9:00~18:00 年中無休(元旦を除く) |