【生産者 SPECIAL STORY】渡辺果樹園:お客様の喜びが一番のやりがい。「届いてうれしい」を後世まで残していく
桃栗3年、柿8年なんのその。長きにわたる手間ひまが実を結ぶ
1964(昭和39)年、日本で初めて開催された東京オリンピックのマラソン競技で銅メダルを獲得した円谷幸吉、ゴジラやウルトラマンなど数多くの特撮映画を手掛け、後に「特撮の神様」と呼ばれる円谷英二のふるさと須賀川市。
福島県のほぼ中央に位置するこの町は、きゅうりや梨、りんごなどの農産物の栽培も盛んだ。そしてもう一つ、県内では生産者が少なくとても珍しいくだもの「ル・レクチェ」も栽培されている。ル・レクチェは西洋梨の一種で、明治時代に日本に入ってきたが、もともとの生産量が少なかったこともあり市場に出まわることはなかった。
貴重なル・レクチェを40年前から栽培している渡辺果樹園の代表、渡辺喜則さんは「ル・レクチェは成木となって生産性が見込めるまで15~20年近くかかるくだもの。うちでも商品として出荷できるようになったのは20年くらい前からですね」と話す。桃栗3年、柿8年という言葉があるが、ル・レクチェはそれ以上の期間を要する。しかし渡辺さんは根気よく栽培を続け、いまでは名が知れ渡る存在となった。
お客様の笑顔を思いながら、一つ一つ真心込めて送り出す
ル・レクチェの魅力はどんなところにあるのか。渡辺さんは「甘く芳醇な香りと口当たりの滑らかさは、くだもののなかでも一番だと思います」と胸を張る。
贈答用として予約が殺到するル・レクチェ。そのほとんどが美味しさの虜になったリピーターだという。「8月初旬に、前年購入していただいたお客様へ案内状を出しますが、その8~9割が再度購入してくれますね期待に応えるためにも手塩にかけてよいものを作らないとね」と渡辺さん。
評判の高いル・レクチェだが、桃や梨、りんごなどとは異なる点がいくつもある。そのひとつに追熟させる必要があること。収穫した果実は大きさを合わせ一つ一つコンテナに詰め、適度な温度、湿度の中で1ヶ月ほど寝かせる。その後等級別に仕分け、商品として出荷できるものを個包装していく。すべて手作業ということもあり果実は一つひとつチェックを重ね、見極めていくという。
さらに箱詰めする際も「すべて黄色く熟したものではなく、熟したもの、もうすぐ熟すものと半々くらいお入れして、長く楽しんでもらいたい」と送られたお客様への気遣いを忘れない。
黄色く熟したル・レクチェは、これからの農業の希望の証となる
自分の子ども以上に愛情を注いでいると笑う渡辺さんに、将来について聞いてみた。
「うちで作るル・レクチェは、ありがたいことに多くのお客様に購入していただいています。だから我々も良いものを作らなくてはいけません。いいものを作るためなら風が強かろうが土砂降りだろうが、手を抜くわけにはいきません。自分たちが納得できるものをお客様に届けたいんです。手元に届いたら『うれしい』と思ってもらえるものを作り続けたい。くだものだって立派な食文化であり、残していかなくてはいけないものだと思っています」。
くだもの作りを残していくことは、農業や食文化を残していくことにもつながる。渡辺果樹園のル・レクチェはその希望となっていくにちがいない。
生産者インフォメーション
渡辺果樹園
WEB | https://watakaju.com/ |
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住所 | 福島県須賀川市森宿安積田118 |
TEL | 0248-73-4174 |
営業時間 | 10:00~17:30 |