【生産者 SPECIAL STORY】大野農園:農業はクリエイティブ。次世代につなげたい、新しい農業のカタチ
造り酒屋から農家へ転身。いまでは真っ赤に実るこだわりのりんごが自慢
福島県の中通り南部、阿武隈高地の西側に位置する石川町。春には町の中央を流れる今出川と北須川沿いに2,000本もの花が咲き乱れ、山間には東北でも有数のラジウム含有量を誇る母畑・石川温泉郷、延喜式神名帳にも記される古い社が残る。
そんな自然や温泉、歴史に溢れる町で120年以上に渡り農業を続けているのが大野農園株式会社だ。
農園の歴史について代表取締役の大野栄峰(よしたか)さんに聞いてみると、「昔は造り酒屋でしたが、この辺り一帯、火災に遭い130軒くらい消失してしまいました。うちもその中の1軒で酒蔵も燃えてしまい農家へ転身したようです。果樹農家になったのは45年くらい前ですね」と答えてくれた。
栽培する種類は桃、梨、ぶどう、りんごの4種類だが、品種別にするとおよそ50種類にもおよぶ。「りんごの『サンふじ』という品種がありますが、蜜が入りやすいものや着色がいいものなど何種類もあるんです」と多さの理由を教えてくれた。
畑の総面積はおよそ8ヘクタール(東京ドーム2個分)。その広さを23名で作業にあたる。「日照量や雨量などりんごの栽培に適した環境なので、まわりの農家さんもりんごの栽培に力を入れています」と大野さん。
くだものだけではなく、オリジナル商品の開発で農業をビジネスに
大野農園ではくだものの栽培のほかに6次化商品の製造・販売・開発にも熱心だ。そのきっかけについて「もともと家族経営でしたが、誰かが仕事ができなくなりお客様に商品を届けられなかったら大変なことになる。そういったリスク回避のためには雇用が必要。そして雇用するにはお金がかかるので、季節商品のくだものだけでなく通年の収入になる商品が必要でした」と振り返る。
販売している商品はジュースや最中、ようかん、ジャムなどバラエティに富んでいる。しかし目新しいものはない。「新しい商品を開発するのではなく、同じ商品でも他社と表現の仕方や形を変えていくことで差別化しています。うちではそういったアイデアを従業員全員で考えています」と大野さんは話す。
実は大野農園の従業員の9割は農業とはまったく異なる分野からの転職者だという。上場している建設会社や有名アウトドアメーカーも含め、多彩な業種からスタッフが集まっている。大野さんは「農家では思いつかないアイデアが飛び出してくることにいつも驚きます。多角的に物事を考えられるのはうちの強みですね」と誇らしげだ。
若者と高齢者が未来を切り拓き、農業の幅を広げていく
多彩な人材が集まる大野農園だが、将来の展望はどうなのか。
大野さんは「近年、高齢化で農業を辞める人が増えています。でもそれってもったいない。例え体が動かなくなっても自分の知識と経験を若い世代につなげていけばいいんです。高齢者が持つ豊富な知識と経験、若者の労働力があれば農業が成り立つ。これまでの農業=農作業という形を改め、農業の幅を広げていきたいです」と力を込める。
さらに「若者たちの希望を叶える農園になればいいかなと。夢や情熱は枝葉となって大きく成長していく可能性を秘めていると思います。そういうものをどんどん形にできる環境を作りたいですね」と続ける。
“農業の幅と可能性を広げたい”
大野農園のチャレンジは農業と若者の未来を照らす。
生産者インフォメーション
大野農園
WEB | https://oononouen.com/ |
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住所 | 福島県石川郡石川町赤羽新宿130 |
TEL | 0247-57-6004 |
オンラインストア | https://oononouen.shop-pro.jp/ |